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マレー半島鉄道の旅A
 
海 京都で生まれ育った私は、とにかく海への憧れがとても強い。ただ眺めていても、海の中で泳いでいても、海は、おしみなく与えてくれます。それが何なのか、私は言語化できないけれど、体が震えるくらいのものを与えてくれます。
 
ホアヒンで朝日が見たいと思いました。初めて見る海からの日の出に、感無量の思いでした。赤ともオレンジとも紫ともいえる空に、今日も一日の始まりを伝える太陽がぐんぐんとのぼる。
 
ホアヒンの日の出 心をとらえて放さないものって自然によるものが多いと思います。一瞬ですいこまれていくものは、映画でも小説でもなく目の前に広がる圧倒的な大自然。そんなことを思いながら、しばらくそこから離れませんでした。
 
人懐っこい子供たち ホアヒンから車を一時間ほど走らせてペチャブリ-を訪れました。ケーブルカーで上がったところにある寺院を見学してきました。どこから回ろうかとキョロキョロしていると、数人の少年たちがこちらを見てひそひそ話しています。ちょうど、リュックの中にしのばせてあった「ビスコ」を食べていたので「いる?」と聞いてみました。
 
そして仲良しになりました。手をひっぱって、いろんなところを案内してくます。タイ語を一生懸命に教えてくれるけれど、なかなか言葉でのコミュニケーションが上手くいきません。でもお互いあきらめない。一緒に過ごしているその時間をめいいっぱい楽しもうとするから、笑顔が絶えない。子供ってすごい、と思いました。ぐんぐん彼らのペースに引き込まれ、そしてそれを楽しんでいる自分がいる。帰り際「じゃあ、どうもありがとう。」となかなか言い出せませんでした。それでも、私が行くとなるといつまでも、いつまでも手をふってくれる彼ら。振り返るたびに、そんな彼らの姿があるので、いつ振り向かないでおこうかと真剣に悩みました。
 
夜行バスに乗って、トランという街に向かいました。とても小づくりで、これといった特徴もないのにここを見てみたいと思いました。一息ついたところで、美容院が目に入りました。この時の私の髪型はお手入れ無しで簡単なクルンクルンのスパイラルパーマでした。ストレートな黒髪のタイ美人のポスターに惹かれて、ふらふらと中に入ってしまいました。英語がまったく通じなかったけれど、筆談とヘアカタログでストレートにして欲しいと伝えました。普段なら、あれこれ雑誌を切り抜いたり、美容師さんと念入りに相談するのに、今回はすべておまかせ。明らかに好奇心が勝っていました。病院の診察ベッドのような台に仰向けになって、ベッドの先から頭をつきだすように指示されました。これから髪の毛を洗ってくれるとわかっているのに、何をされるのかどきどき。だんだん覚悟ができてきました。まずは水道の蛇口から水をぶっかけられて、3回もシャンプーされました。もちろん「かゆいところ、ございませんか?」なんて言葉はありません。顔面から耳の中まで水浸し。あまりの大胆なシャンプーのやり方に、はやく終わらないかとそればかり願っていました。しばらくすると、もう日本では見ることがない、あの「板」がでてきました。そして、それらを何枚も頭にひっつけて、あんなに乱暴に扱われたのに、まださらさらストレートへの希望を捨てない私。板をはずすと、全スタッフが寄ってきて、それぞれが目の細かいコームで私の中途半端にのびきった髪の毛を、力をこめてしごきだしました。右に、左にひっぱられながら、髪の毛がすべて抜け落ちるのではないかと真剣に心配したほどです。でも、みんな、私の顔を覗き込んでは、ニコニコしている。これにやられるのです。「ああ、頑張ってくれているのね。」って。ここまでで4時間くらい。洗い流すと、あら、なかなかいいんじゃないの?というかんじでさらさらに。これで終わりと思っていたら、今度はブローをしてくれるみたいです。1時間たっぷりとブラッシングが続けられました。タイ語で、若いスタッフが誉めまくってくれているのがわかります。「コップンカー」を繰り返しながら、超ストレートになった髪の毛をサラサラと風になびかせて店を出ると、外はすでに真っ暗でした。結局、5時間くらいかかったけれど、あーだこーだとスタッフと騒ぎながら、面白い時間を過ごしました。結果よりも、その過程に満足しました。完全な安心なんてないからこそ、わくわくするのだと思います。旅もそう。誰かに頼りきった状態よりも、自分できりひらいていくところに醍醐味があるのだと思う。
 
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