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スペイン・アンダルシアの旅A
山あいにひっそりと存在する村、カピレイラ。この響き、あの風景は一生忘れません。ここで、ある瞬間に出会いました。そして、それまで生きてきて感じたことのないような、妙な感覚におそわれました。旅も終盤にさしかかり、どんどん自分の中の余分なものがとっぱらわれて「素」の状態に近づいていたから、そういう感じ方をしたのかもしれません。
なんてことはないのですが、一人のおじいさんの歩く姿を見て涙が次から次へと流れ落ちてきたのです。私は下の村からカピレイラまでの坂道を散歩していました。その前方に、長い長い道のりをたった一人で杖を両手でつきながら一歩、また一歩と恐ろしいくらいゆっくりと歩いているおじいさんの姿が見えました。目が離せません。足が不自由なようで、あまりにもゆっくりな動きなので、時間の感覚が分からなくなるほどです。夕暮れまでにカピレイラにたどり着けないのではないか?というくらい少しずつ少しずつ前に進む姿。いつまでたっても止まることのない、歩くという動作。たった、それだけの動きを、まさに生きていたおじいさんの。胸がきゅーとしめつけられて、熱くなりました。いいようもない感情が、私の体全体にじわじわとこみあげてきます。とめどなく涙がこぼれ落ちる。生きている、ただそれだけ。歩いている、ただそれだけのこと。でも、あの光景を私は忘れられません。大きな大きなパワーをくれたあの瞬間。とにかく衝撃的で、この瞬間に立ち会うために旅に出てきたのだと思いました。それくらいの出来事でした。
その夜、ワインでほてった体を冷ましに夜の山道を散歩しました。カピレイラは、かなり高い位置にあって、そこまで行くのに村人が使うバスが一日に一本しかないという村です。星空は手が届きそうなくらい近くて、降って落ちてきそうというよりも、空間がみえないくらいの数でした。しばらく山肌に寝転がって満点星と向き合いました。小川の流れる音だけが聞こえてきて、とても静かな夜でした。
街角で絵はがきをつくって売っていたお姉さんにカメラを向けました。くしゃくしゃっとはにかんだ、とてもいい表情。それはとても緻密なスケッチ画でした。どんな方法でもいいから、とにかく自分を表現できる技術がほしい。私はずっと探している。自分自身の内面や世界観を他の人に共感してもらえるような表現方法。
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