『世界見て歩き』は、1990年代後半~2000年初め頃の学生時代の旅の記録が主な内容となっています。情報は古く、内容も青臭いですが、思い出に残してあります。写真は、当時フィルムカメラで撮影していたので、少ない枚数の中から選んだものです。日付入りだったり、そうでなかったりしますが、どうぞご了承ください。

マレー半島鉄道の旅2

Traveled in: 1997年 02月

20081015-malay02.jpg
京都で生まれ育った私は、とにかく海への憧れがとても強いです。ただ眺めていても、海の中で泳いでいても、海は、おしみなく与えてくれます。それが何なのか言語化できないけれど、体が震えるくらいのものを与えてくれます。

ホアヒンで朝日が見たいと思いました。初めて見る海からの日の出に、感無量でした。赤ともオレンジとも紫ともいえる空に、今日も一日の始まりを伝える太陽がぐんぐんとのぼる。

20081015-malay05.jpg
心をとらえて放さないものって自然によるものが多いと思います。一瞬ですいこまれていくものは、映画でも小説でもなく目の前に広がる圧倒的な大自然。そんなことを思いながら、しばらくそこから離れませんでした。

ホアヒンから車を一時間ほど走らせてペチャブリーを訪れました。ケーブルカーで上がったところにある寺院を見学してきました。どこから回ろうかときょろきょろしていると、数人の少年たちがこちらを見てひそひそ話しています。ちょうど、リュックの中にしのばせてあった「ビスコ」を食べていたので「いる?」と聞いてみました。

20081015-malay06.jpg
そして仲良しになりました。手をひっぱって、いろんなところを案内してくれます。みんなでケーブルカーにも乗りました。タイ語を一生懸命に教えてくれるけれど、なかなか言葉でのコミュニケーションが上手くいきません。でもお互いあきらめない。一緒に過ごしているその時間をめいいっぱい楽しもうとするから、笑顔が絶えない。子供ってすごい、と思いました。ぐんぐん彼らのペースに引き込まれ、そしてそれを楽しんでいる自分がいる。帰り際「じゃあ、どうもありがとう」となかなか言い出せませんでした。それでも、私が行くとなるといつまでも、いつまでも手をふってくれる彼ら。振り返るたびに、そんな彼らの姿があるので、いつ振り向かないでおこうかと真剣に悩みました。

夜行バスに乗って、トランという街に向かいました。とても小づくりで、これといった特徴もないのにここを見てみたいと思いました。

一息ついたところで、美容院が目に入りました。この時の私の髪型はお手入れ無しで簡単なくるくるのスパイラルパーマでしたが、ストレートな黒髪のタイ美人のポスターに惹かれて、ふらふらと中に入ってしまいました。英語がまったく通じなかったけれど、筆談とヘアカタログでストレートにしてほしいと伝えました。

台の上に仰向けになり、水道の蛇口から水をぶっかけられて、3回シャンプーされました。もちろん「かゆいところ、ございませんか?」なんて言葉はありません。顔面から耳の中まで水浸しです。大胆です。はやく終わらないかとそればかり願っていました。

しばらくすると、もう日本では見ることがない、あの「板」がでてきて、髪の毛に貼り付けられました。板をはずした後は全スタッフが寄ってきて、目の細かいコームで私の中途半端にのびきった髪の毛を、力をこめてしごきだしました。右に、左にひっぱられ、髪の毛がすべて抜け落ちるのではないかと真剣に心配しました。ここまでで4時間かかりました。

洗い流すと、あら、なかなかいいんじゃないの? という感じになっていました。これで終わりと思っていたら、さらに1時間たっぷりとブラッシングが続けられました。タイ語で、若いスタッフが誉めまくってくれているのがわかります。

「コップンカー」を繰り返しながら、さらさらストレートになった髪の毛を風になびかせて店を出ると、外はすでに真っ暗でした。結局、5時間くらいかかったけれど、あーだこーだとスタッフと騒ぎながら、面白い時間を過ごしました。